非常に分かりやすく自殺者の心理が説明されていたので、メールマガジン「シカゴ発 映画の精神医学」第158号から引用させてもらいました。
「シカゴ発映画の精神医学」
発行者: 樺沢紫苑
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その質問とは、「どうして自殺しちゃいけないの?」というものです。
命とは自分のもの。
死のうが生きようが勝手じゃないか?
個人の自由ではないか?
「死にたい」という願望を実現してはいけないのか?
人に迷惑をかけなければ死んでもいいじゃないの?
自殺について、そう考える人もいるでしょう。
なぜ精神科医は、「自殺したい」という人を必ず止めるのでしょうか?
それには、重要な理由があります。
自殺の半分以上は、「うつ病」が関係していると言われています。
うつの状態が自殺の背景にある、ということです。
「自殺」にはうつ以外にも、統合失調症や人格障害。あるいは、精神疾患が
はっきりとしない場合などいろんなパターンがありますが、ここでは最も多い「うつ病」に関連した自殺に関して説明します。
「うつ病」に伴う症状の一つとして、認知障害があります。
わかりやすく言えば、考え方が非常にネガティブになって、悪い方に悪い方
に考えてしまう。マイナス思考になってしまうということです。
そういう誤った認知パターンに本人は意識せずに陥ってしまっている、ということです。
もとはポジティブで前向きに考えることが多かった人でも、うつ状態になる
と思考はネガティブに変化します。
仕事の失敗は全部自分のせいだ。
会社や家族に申し訳ない。
自分は人に迷惑をかけている。
そんな自分は、いない方がいい。
こんな考えばかりが頭の中に浮かんでくるわけです。
当然の帰結として、「死にたい」という気持ちが浮かんできます。
生物学的に説明しましょう。
うつ状態というのは、セロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質が
枯渇した状態です。
脳内のエネルギー不足のような状態で、神経の伝達がうまくいかない。ガス欠寸前で、アクセルをいくら踏んでもスピードが出ない車のようなものです。
そのせいでいろんな症状が起きてきます
意欲が出ない。やる気がない。
気分が落ち込んでつらい。
死にたい。
これらの症状はセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の減少と
関連している、と言われています。
SSRI(択的セロトニン再取り込み阻害剤)などのセロトニンを増やす薬を飲ん
でゆっくりと休養をとれば、セロトニンは増えてきます。
そうするとうつ的な気分はなくなり、思考はポジティシブになり、前向きに
なり、死にたい気持ちもなくなるわけです。
車を運転していてエンストして車が走らなくなりました。
原因は、ガス欠です。
そんな時、どうしますか?
ガソリンを補給しますね。
うつ状態になったから自殺するということは、車がガス欠してエンストした
ならば、「車をぶち壊してしまえ!!」というのと同じことです。
普通はそんなことしませんよね。
セロトニンが下がる → 死にたい気持ちになる
この場合はセロトニンを増やせばいいわけです。
セロトニンが下がる → 死にたい気持ちになる → 死んだ方が良い
「死にたい気持ちになる → 死んだ方が良い」これは、主観的な感情としては理解できるわけですが、生物学的にみれば、おかしな考えであることがわかります。
単にセロトニンが下がっただけで、いちいち自殺していてはキリがありませ
ん。
もう少し分かりやすく説明しましょう。
脳内でセロトニンが減った状態というのは、電圧の下がったコンピューター
のようなものです。
計算を入力しても、正しい答えは出てこないのです。
理由は電圧が下がっていて、うまくコンピューターが機能していないからです。
その電圧の低下したコンピューターに、「生きるべきか? 死ぬべきか?」
という質問を入力すると、「死ぬべきである」という答えを導き出すのです。
さて、その誤った結果をもとに、「自殺する」という行動を起こすのは、
正しいことでしょうか?
「生きるべきか? 死ぬべきか?」この問題について自分としては必死に考
えて、「死」という答えを導き出し、「自分の考え」と錯覚します。
しかしそれは、「機能停止寸前のポンコツ・コンピューターが出した答」であって、本来の演算能力の高い自分というコンピューターが出した答えではないのです。
うつ状態の時に、重大な判断をすると必ず間違います。
電圧の下がってているコンピューターで、正しい結果を出すことは不可能
なのです。
「死ぬべきかどうか?」「会社をやめるべきか?」「離婚すべきか?」
こうした重大な問題に対して、うつ状態の時に判断を下さすと、まちがいなく悲観的な結論を導きだすのです。
これが、うつ状態における脳というコンピューターの特徴です。
したがって、精神科医は「重大な問題は、うつ病が治ってから決めてくださ
い」とアドバイスします。
コンピューターの電圧が下がった状態では、コンピューターが異常な状態であることを知らせるアラームは作動しません。
つまり、うつ状態になった患者さんは、「自分はうつ状態であって、考えが悲観的になっている。本来の自分とは違う」という重要な事実に気付かない、ということです。
したがって、「どうしても死にたい」という気持ちに支配されると、それを行動にうつす可能性が高いのです。
「生きるべきか? 死ぬべきか?」
こうした重要な問題は、コンピューターが正常な状態において結論を出すべきでしょう。
うつ状態ではない。冷静で正常な思考状態において、何ヶ月も熟考した結果、「死ぬ」という結論を出したのであれば、私は精神科医としてそれを止めることはないでしょう。
ただそういう人とは、今まで一度も会ったことはありません。「死にたい」という人には、ほぼ間違いなく、認知の障害、認知の歪み。そしてそれに基づく歪んだ思考パターンが存在しているのです。
結局、「自殺」する人は、自分で決断して自殺しているように思いこんでいるわけですが、病気に殺されているのと同じわけです。
自分が正常なのか、異常なのか?病的状態なのか、そうでないのか?
病的状態にある人は、自分は「正常である」「うつ状態ではない」と認識
(誤認)します。
そのギッャプが悲劇を生むわけです。
自殺を減らすには自分の予備知識や自殺に対する認識を高めるということは大切ですが、家族や周囲の人間が、「正常な思考状態ではない」という異常に気付いてあげることが、もっと大切になってきます。
注) わかりやすく説明することを優先するために、実際の科学的な事実を
単純化して説明しています。実際には、いろんな要素が関係してきますので、「セロトニンの低下→自殺」のように単純ではありません。
引用はココマデ
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